人文学部校名変更記念講演会第4回「発達障害の深い理解に向けて」が開催されました。

2020年03月24日トピックス

2019年11月3日(日)、にて、人文学部校名変更記念講演会第4回「発達障害の深い理解に向けて」が、人文学部および人間文化学会の主催、京都市・京都新聞の後援で開催されました。心理学に焦点づけた講演会としてはこれまでになく多い289名もの方にお越しいただきました。

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7月に続き心理学の知見をお伝えする講演会の2回目ですが、実験や調査を主とする“基礎心理学”と現場での対人援助を主とする“臨床心理学”という2つの異なる立場から、発達障害を深く理解しようというものでした。

講演の第一部は基礎心理学の立場から、行廣 隆次人文学部教授による「心理学実験を通して見えてきたもの -自閉症スペクトラム者は如何に世界を捉えているのか-」でした。多くの実験研究を通して解った、自閉症スペクトラム者の認知特性について紹介がなされました。詳しい内容は「参加記」をご覧ください。

第一部 学生参加記をよむ

講演の第二部は臨床心理学の立場から、橋本 尚子人文学部准教授による「カウンセリングを通して見えてきたもの -個人の特性を把握することの難しさ-」でした。カウンセラーとして働いてきたご経験から、他の心理的症状(例えば、摂食障害、うつなど)での来談であっても、面接が進むと実はその中核には発達障害があることがわかってくることなどが、カウンセラーとしての体験に基づいて紹介されました。詳しい内容は「参加記」をご覧ください。

第二部 学生参加記をよむ

非常に熱心な聴衆の方々に恵まれ、回答しきれないほどの多くの質問をいただき、とても有意義な時間となりました。

学生参加記

第一部「基礎心理学の立場から 心理学実験を通して見えてきたもの」の講演会を聴いて

人文学部心理学科1年 中村友紀

発達障害とは、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動性障害、学習障害などのことを指す。ASDの特徴として、社会的コミュニケーションがうまくいかないこと、行動、興味、活動における限定的,反復的な様式が見られること、感覚過敏もしくは鈍感であることなどがある。今回は、実験などの科学的な研究方法によってASDの心の仕組みを解明するための研究が紹介された。研究のアプローチとして、認知的特性、脳や神経の働き、心が動く過程の究明などが重視されている。

多くの心理学実験によって、ASDの苦手なことや得意なことが明らかになった。苦手なこととして、社会的コミュニケーションや対人相互交流、他人の心を理解するといった他者と関わることがある。得意なことには、ブロックデザインテスト、錯視(が少ない)、埋め込み図形テスト、細部の情報処理、記憶といったことがある。これら得意なことや苦手なことを含むASDの特徴の背景には、情報の全体的統合が弱いという特性が考えられる。すなわち、ASDは定型発達者に比べて、文脈にそって全体を統合して物事を見る傾向が弱く,細部の情報をとらえることに優れている。そうした傾向を明らかにした心理学実験が紹介された。

このように、定型発達者とASDを比べたとき、必ずしも定型発達者が勝っているとは限らない。ASDのほうが勝っている点もある。現在までにASDの原因が完全に明らかになっているわけではない。実験などの基礎的研究によって障害のメカニズムが解明されていくことが、将来の臨床につながると期待して、研究を積み重ねていくことが大切である。

今回この講演を聴いて、ASDであっても定型発達者であっても、他の人より勝っている点を個性や特技としていかしていくことでだれにも負けない唯一無二の存在になれるのではないかと思った。障害というと悪い所やできないことが目につきがちだが、良いところを含めて、それぞれの特徴に目を向けることが理解につながるのではないかと思った。

第二部 参加記

人文学部 心理学科1年 谷口 大貴 

発達障害の方を治療するとき、従来の傾聴によるカウンセリングが通用しにくい事例もあり、現場では研究と模索がされているということで、今回は、発達障害の特性を捉えることの難しさがテーマでした。 

その難しさの一例として、現在、灰色の発達障害と言われるものがあります。それは、定型発達の人の中にも発達障害の特徴が見られ、また発達障害の人の中にも定型発達の要素が見られるというもので、定型発達と発達障害のあいだに、明確な線引きはしにくいためです。また発達障害は、個人差が非常に大きく、一人の人の 人生の中でもその障害が目立つ時期、目立たない時期が存在することなどが話を聞いてわかりました。 

そして大切なことは、信頼できる人と話すことです。そこで関係が培われ、信頼関係が生まれます。また、自分の傾向を自分で知ることが大切で、そのためにも、定点となる人に自分の話をすることは意味を持つことが多いのです。日常ではカウンセリングに匹敵するような落ち着いて自分の話をする場はまずないので、そのような場も大切であることがわかりました。 

自分自身、小学4年生の時に忘れ物がひどく、担任の先生に障害持ちなのではないかと言われ、病院に行くように言われたことがあります。今は何事もなく学生生活を送れていますが、発達障害は、知的障害よりもほかの人には見えづらいものなのだと知りました。 

(人文学部 歴史文化学科 山本淳子)

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