2年ぶりに卒業式・学位授与式 コロナ禍、厳かななか卒業生に笑顔

2021年03月22日トピックス

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「これからも自分がどうありたいのかを常に考えて行動する『トンガリ人材』であり続けます」――。バイオ環境学部バイオサイエンス学科の青木秀磨君は卒業式代表の答辞で力強く決意を述べた。2021年3月22日、今年度の本学卒業式・学位授与式が京都市内にある「みやこめっせ」で開催された。昨年度はコロナ禍の影響で中止せざるをえなかった。今回も影響は残るものの卒業生と教職員に出席者を制限するなど感染対策に万全を期して挙行された。厳かな雰囲気のなか、笑顔あふれる卒業生らの姿に、関係者も安堵した表情だった。

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関西フィルハーモニー管弦楽団の調べに合わせ、学科ごとに学生らが、教職員の拍手に迎えられ会場入りするところから式は始まった。全員が着席した後、前田正史学長から各学部総代および大学院の各研究科の代表に学位記が授与された。

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引き続き、学業が優秀だった学生4人に前田学長から理事長賞が贈られた。また、本学と縁のあった京都商業で甲子園に出場しプロ野球でも活躍した伝説の名投手・澤村栄治氏にちなんで設けられた澤村賞の発表もあった。硬式野球部で活躍した人文学部の喜多隆介君で、昨年のドラフトで巨人から育成枠で指名された。喜多君は2軍に昇格し、春季キャンプに参加しているため、卒業式には出られなかった。代わりに背番号「027」のジャイアンツのユニフォーム姿で喜びを語るビデオメッセージが披露された。

学長告辞では、前田学長が卒業を祝うとともに「判断に迷うことがあったら、いつでも本学に戻ってきてください。教職員一同、全力で応援します」と呼びかけた。卒業生代表の答辞では、青木君が4年生の時に自分で立案し実行した企画の経験を基に「自分の意思を明確に持っていて、行動し続ける人こそが、本学が掲げる『トンガリ人材』だ」と語ると同時に、そうした自分たちを支えてくれた関係者への感謝の言葉を述べた。

祝辞に立った永守重信理事長は、青木君の答辞の内容を絶賛し、「自信と勇気を持って、これからの人生を生きていってほしい」と、エールを送った。

この式の模様は参列できなかった父母らが見られるように生配信された。

今年度の卒業生は、経済経営学部が246人、人文学部が98人、バイオ環境学部が131人、健康医療学部が201人の計676人。大学院は修士課程で経済学研究科が4人、人間文化研究科が2人、バイオ環境研究科が2人の計8人だった。

学位記授与の各学部総代は、経済経営学部が末延昌馬君、人文学部が小原俊英君、バイオ環境学部が青木秀磨君、健康医療学部が野村萌々香さん。各研究科の代表は、経済学研究科が子谷沙代さん、人間文化研究科が西村春香さん、バイオ環境研究科が松本悠さん。理事長賞を贈られたのは、経済経営学部が水野真由美さん、人文学部が北野景士君、バイオ環境学部が白木彩さん、健康医療学部が秦泉寺勝太君。

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挨拶に立つ前田正史学長

卒業式 学長告辞/President's Graduation Address

皆さん、ご卒業、まことにおめでとうございます。また、これまで皆さんを支えてくださったご家族や保護者の皆様に、教職員一同、心からのお祝いと感謝を申し上げます。

今年度、学部卒業生は、経済経営学部246名、人文学部98名、バイオ環境学部131名、健康医療学部201名の総計676名です。大学院は、修士課程で経済学研究科4名、人間文化研究科2名、バイオ環境研究科2名の諸君が学位取得をされております。

ご存じのように、一昨年からのCOVID-19感染症により、皆さんの学生生活は多大な影響を受けました。
昨年3月、WHOはCOVID-19をパンデミックと公式に宣言し、世界的な感染拡大が続きました。本学では感染拡大防止を徹底し、最初は遠隔授業を中心に、その後は対面授業を一部再開しましたが、皆さんもさぞや不安を覚えたのではないでしょうか。沢山のレポートを書いたり、先端なびでの入力作業があったり、大変であったと思います。先生方も職員も最初は手探りでした。教職員の懸命な努力と皆さんの協力の結果、オンライン授業への転換等、環境が少しずつ整備され、皆さん方へのアンケートでも「おおむね良い授業が行われている」と評価いただきました。
しかし、大学生活最後の1年間に、クラブや同好会の活動、先生方や仲間との自由な語らい、友人や先輩との出会いなどが制限されたことは誠に残念です。コロナ禍で経済的にも苦しかったと思います。まさにコロナの禍(わざわい)の中での学びでありました。しかし、皆さんは、その困難にも負けずに卒業資格を取得されました。大いに誇りに思っていただきたいと思います。

私が大学に入学したのは、1972年です。皆さんのご両親が生まれたころかもしれません。1969年は入試が中止になりました。“安田講堂事件”を耳にされたことがある人もいるでしょう。1968年から1969年にかけて全国的に学生運動が広がり、機動隊と学生団体、そして学生団体同士の衝突により、学内は大きな混乱に巻き込まれていました。私が入学したころは少し落ち着きを取り戻していましたが、政治的対立が暴力を生む様子もまだ見られました。
この紛争は人が起こしたものです。その発端は多様ではありましたが、あえて言うならば、価値観の衝突です。その中には、伝統的な学術の価値観を持つ者と、新しい価値観を持ち込もうとする若い世代との衝突もありました。お互いのやり方にはかなり問題がありましたし、失ったものも少なくありません。ただ、新しく持ち込まれた風が新たな学問と分野を生み出すことになったことも事実です。自問していたのは、「大学で学ぶ」とはどのようなことか、「私はなにをしたいのか」「どうなりたいのか」です。私がいつも皆さんに問いかけていることです。

コロナ禍における大学生活は、社会全体が大きな混乱の中にあるという意味では似た側面があるかもしれません。しかし、コロナ禍だからこそ、その大切さに気づいたこと、得たこともあったのではないでしょうか。これから社会人としての一歩を踏み出そうとする皆さんに、今回の試練をぜひとも前向きに捉えていただきたい。必ずや良い経験として生かされると信じています。

これまで皆さんは、守られてきました。保護者の方に、大学を含む学校に、そして地域の社会にも、です。これから、皆さんは自分自身が自立して生きることは当然のこととして、社会を構成する一員としての責任を果たしていくことになります。
精神と肉体に無理をして頑張れ、ということではありませんが、「力の出し惜しみをしない」ことです。自分の夢、なりたい私、実現したいことに一歩でも近づくことをめざし、多面的な視点に立って物事を考え、着実に歩んでいってほしいと思います。これからの社会の担い手となるのは皆さんです。皆さんが本学で4年間学んだことは、宇宙の知のまだごくごく一部かもしれませんが、新しい知恵や知識を身につけるための道具としては十分なものを手にしているはずです。大いにこれを活用し、自分自身で新たな“ちから”を身につけて、一歩でも自分の夢に近づく努力をしてください。
そして、皆さんが「このほうが良い」と思うことがあるなら、その道を進んでいってください。ただし、もし、疑問に思い、判断に迷うことがあったら、いつでも本学に帰ってきてください。教職員一同、皆さんを全力で応援し、皆さんとともに歩んでいきます。皆さんが卒業した京都先端科学大学は、経済経営学部、人文学部、健康医療学部、バイオ環境学部、工学部を備えた総合大学です。来春、2022年4月にはMBAを取得できるビジネススクールの開校を予定しています。皆さんのどんな疑問にも答えられます。

ポストコロナの時代をしなやかに、たくましく生き抜いてください。これからもパンデミックのみならずいろいろな困難もあるでしょう。おそれることなく、道を切り拓き、乗り越えてください。そして、皆さんが新しい時代のリーダーになり、大いに活躍することを心より期待しています。

本日は、ご卒業、おめでとうございます。


Graduates, congratulations on your accomplishment! And at the same time, our faculty and staff want to congratulate your families and guardians, who have supported you throughout your education.

This year, we have a total of 676 graduates from our undergraduate programs: 246 students from the Faculty of Economics and Business Administration, 97 students from the Faculty of Humanities, 131 students from the Faculty of Bioenvironmental Science, and 201 students from the Faculty of Health and Medical Sciences. As for graduate students, we have four students from the Graduate School of Economics, two students from the Graduate School of Human Culture, and two students from the Graduate School of Bioenvironmental science who have received their master's degrees.

As you all know, the lives of our students have been greatly affected by COVID-19 over the last two years. Last March, the WHO officially declared COVID-19 a pandemic, after which the virus spread around the world. At KUAS, we took all possible safety measures, first focusing on implementing remote courses and then, later on, resuming part of our curriculum on campus. I’m certain that it was an anxious time for you all. However, thanks to the hard work of our faculty and staff, our switch to online learning was a success, and when we took a student survey, you all rated your online courses as "good overall”. However, it is truly regrettable that you were restricted from participating in school clubs, talking to your teachers, and enjoying the company of your classmates during your senior year of university. COVID-19 also put a great financial strain on many students. However, you have overcome these difficulties and obtained your diploma, and I want you to feel proud of yourselves.

When I enrolled in university, it was 1972. For many of you, that may be around the time your parents were born. Anyway, in 1969, university entrance examinations were canceled. Some of you may have heard of the "Yasuda Auditorium Incident," but that was when the student movement spread nationwide from 1968 to 1969, and clashes between riot police and student groups, as well as between different student groups, caused a great deal of confusion at universities across the country. When I entered the university, things had calmed down a bit, but there were still signs of political conflicts that gave rise to violence.

This conflict was caused by people. Its origins were diverse, but I dare say it was a clash of values. Some of the conflicts were between those with traditional academic values and the younger generation who were trying to bring in new ideas. There were considerable problems with each side's approach, and much was lost as a result. However, it is also true that the new ideas brought in on the wind of these movements gave birth to new disciplines and new fields of study. The questions that I asked myself at the time were, "What does it mean to study at university?", "What do I want to do?” and “Who do I want to become?” These are the same questions that I always ask our students.

University life during the COVID-19 pandemic may be similar to those times in the sense that society is in turmoil. However, it is precisely because we are amid this pandemic that some of you have realized the importance of university life and hopefully gained something from this experience. To those of you who are about to take your first steps as members of society, I urge you to look at this ordeal in a positive light. I am sure this experience will serve you well.

Up until now, you have all been protected. You have been protected by your parents, by your schools, including your university, and by your local communities. From now on, you will have to live independently and fulfill your responsibilities as a member of society.

This does not mean that you should mentally and physically overburden yourselves. Rather, it means that you should be willing to put forth your best effort. Seek to be objective and pragmatic, and seek to come even one step closer to who you want to be, and what you want to achieve. You will become the leaders of our future society. What you have learned over the past four years may be a very small part of the grand knowledge of the universe, but you should now have the tools to acquire new wisdom and knowledge. Make the most of these tools, acquire new "powers" for yourselves, and use them to get a step closer to your dreams.

And if you happen to think one day that a different path would suit you better, don’t hesitate to try something new. However, if you are not sure what to do, come back to campus anytime. All of our faculty and staff will do their best to help you find the right path. Don’t forget that Kyoto University of Advanced Science, your alma mater, is a comprehensive university with a Faculty of Economics and Business Administration, a Faculty of Humanities, a Faculty of Health and Medical Sciences, a Faculty of Bioenvironmental Sciences, and a Faculty of Engineering. Next spring, we will open a business school as well for students to earn MBAs.
 
Be strong and resilient in the years after COVID-19. The future will have more challenges in store. Don't be afraid to carve out your own path to overcome them. I look forward to watching you become the leaders of a new era.

Congratulations, graduates. We are proud of you.

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答辞を述べる青木秀磨さん(バイオサイエンス学科)

青木君の答辞

桜のつぼみも膨らみ始め、暖かな日差しに春の訪れを感じるこの良き日に、私たちは無事、卒業式を迎えることが出来ました。本日は、コロナ渦の状況にも関わらず、永守理事長、前田学長をはじめとする諸先生方、職員の皆様、並びに大学関係者の皆様のご臨席のもと、このような盛大な式典を催していただいたこと、卒業生一同、心より御礼申し上げます。また、前田学長より告辞のお言葉を賜りましたことに、重ねて御礼を申し上げます。

振り返れば4年前、新しい大学生活を前にして漠然とした不安を持ったまま、私は本学に入学しました。大学生活では何か新しいことをやろうと思っていましたが、1年生から3年生までは周囲の環境のせいにして、自分がやりたいことをなんとかして成し遂げるという考えに至っておらず、自ら物事を動かすということが全くできませんでした。
4年生になって就職活動や卒業研究が本格的に始まり、様々な企業の方々や研究室では先生や先輩方に出会うことができました。このような出会いがあったことがきっかけで、周囲の環境のせいにして何もしないのではなく、誰もやっていないことをやってみることの大切さを学びました。その結果、就職活動も卒業研究も自ら考えて行動すれば、さらに良い結果が得られることを実感しました。

就職活動や卒業研究以外にも、コロナ渦の状況だからこそ何ができるのかをモットーにして私はこの1年間学生生活を送り、その中で二つの企画を立案し、実際に実施しました。このような企画を立案したのは本学の一番の課題は学部間や学年間との交流のなさだと私が考えたからです。一つは、今悩んでいることや、本学でやりたいこと、興味のある研究室などについて学科内の学生と話し合うオンラインでの雑談会です。学科内の1年生から3年生の全ての学生に声かけをし、はじめは誰も反応してくれませんでしたが、少しずつ仲間を増やし、半年間、雑談会を定期的に行うことができました。もう一つは3Dプリンターを用いた制作から商品化までに至る企画をオンライン上で議論するという学部を越えた共同プロジェクトです。工学部を含む他学部の学生を勧誘し、学部を越えた学生間での交流活動を行いました。これらは、今をさらに楽しむためにはどうすればいいのかを考えて行動した結果です。これまで誰もやっていなかったことに対して自分が先陣を切ったからこそ、意義があり、やりがいがあったのだと自負しています。

多様にかつ複雑に変化する現代社会では、改革や変革が常に求められていますが、それはビジネスの世界だけでなく、あらゆることに対して言えることだと思います。在校生の皆さんに伝えたいのは、どんな環境にいるのであれ、行動するかしないかは自分次第ということです。これを機に、大学において自分は何がやりたいのか、自分は何ができるのかを常に考え、さらには自ら提案することで、大学そのもののあり方をも、自分たちで作り上げていってほしいと私は思っています。この京都先端科学大学にはチャレンジを真剣に受け止めてくれる環境があります。このようなコロナ渦の状況だからこそ自分一人でなく、多くの人と一緒に考え、行動することの意義を考えてもらえればと思います。

私はこれから社会の一員として、新たな生活を迎えます。初めて京都から離れ、一人暮らしと見知らぬ土地でのスタートとなります。期待と不安でいっぱいですが、その状況を楽しんでこれからの生活を送っていきたいと思います。私が本学で一番学んだことは、どんな環境であっても、自分は何をするべきかを考え、行動するということです。このように自分の意思を明確に持っていて、行動し続ける人こそが、京都先端科学大学が掲げている「トンガリ人材」だと私は考えています。先輩方の姿を見ているとこれからの社会人生活が容易な道のりではないことは、ひしひしと感じています。そのような中でも、先輩方に一日でも早く追いつき、追い越せるように、私はこれからも自分がどうありたいのかを常に考えて行動する「トンガリ人材」であり続けます。
最後になりましたが、今の私があるのはひとえにこの4年間私に関わってくださった方々のおかげです。時には厳しく指導していただいた先生方、職員の皆様に厚く御礼を申し上げます。様々なアドバイスや私の背中を押してくださった社会人の先輩方、日々楽しく一緒に過ごした友人達、私と一緒に活動してくれた後輩達、そして、ここまで育ててくれた家族に対しても重ねて御礼を申し上げます。
本日ご臨席していただきました皆様方のご健康とご多幸を願い、京都先端科学大学の更なる発展を心よりお祈りいたしまして、答辞とさせていただきます。

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祝辞を述べる永守重信理事長

永守理事長の祝辞

昨年はコロナ禍の影響で卒業式ができなかったが、今年は卒業生の皆さんに祝辞を述べることができうれしく思います。ご卒業を心よりお祝い申し上げます。

3年前に理事長に就任し、大学が大きな変化を遂げてきたことは皆さんも実感してくれていると思います。今は企業でも大学でも組織は変革していかないとだめになっていきます。私が大学づくりに参画したのも改革を進め、特色のある大学を創りたいからです。まさに「トンガリ人材」を輩出したいからです。それが私の理想であり、夢であり、希望です。昨年は工学部を新設し、4月からは付属の中高もできます。来春には経営者を創るためにビジネススクールも開設します。着々と改革を進め、この大学を、社会問題を解決できる、ソリューションしていく大学にしていきます。そんな本学に寄せられる社会の期待を、私はひしひしと感じています。その証明になるのが、皆さん卒業生です。皆さんが社会に出て成功してくれることが、まさに大学の成功にもつながります。その意味でも、青木君の答辞はすばらしい。君たちは京都先端科学大学になって2度目の卒業生で、2期生になります。そんな2期生のなかに改革の意味を理解する代表がいることは本当に心強い限りです。
しかし、はっきり言って世の中はそんなに甘くない。人は人を裏切るし、国も人を裏切ります。でも努力だけは人を裏切らない。このことは28歳で起業し、数々の困難を乗り越えてきた私は身に染みて実感しています。今後、AIやロボット、ドローンなどのさらなる進化で技術革新のスピードはますます増していき、2030年には工場はすべて無人化されているでしょう。そんな世の中で生き残っていくには、指示待ちではなく自分で考え仕事をする、自分の専門をきちんと持ち、人に負けない能力を磨いていく、だらだら仕事をせず生産性をたえず高める――こうした努力を積み重ねられる人材になることが必要になります。このことをよく覚えておいてほしいと思います。

社会に巣立っていく皆さんに送ります。自信と勇気を持て。そして努力を重ねれば必ず成功する。皆さんの将来は明るい。ぜひ頑張ってください。

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(総合研究所 上島誠司)

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