新型コロナウィルス(COVID-19)に伴う緊急事態宣言が身体活動量・メンタルヘルスに及ぼす影響 −親子運動プログラムの効果に注目して−

2021年04月23日トピックス

<京都知恵産業創造の森参画:親子運動プログラムプロジェクト報告>

健康医療学部健康スポーツ学科 教授 青木好子、准教授 満石 寿は、一般社団法人京都知恵産業創造の森(京都市下京区)2020年度産学連携共同研究開発事業プロジェクトに参画、企画が採択され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う緊急事態宣言発出中の親子の活動とともに、ストレス、免疫反応、メンタルヘルス、認知機能実行機能の実態を2020年4月より調査開始し、この度、調査結果がまとまりましたので、報告致します。この研究では、親子運動プログラムを配信して運動する機会を提供することで、子どもをもつ家族の心身の健康支援に役立てることを目指してその効果を検証することができました。

今回の調査にご協力いただきましたお子さま、保護者のみなさまに、心より感謝申し上げます。

◆調査結果概要◆

  1. 子どもも保護者も身体活動量が平常時と比較して減少していた。目標歩数に対して、調査期間中の平均歩数の減少率は子どもで約3割、保護者で約1.5割。
  2. 身体活動量が多い人と少ない人の差が大きい。
  3. 保護者の身体活動量が多い家庭の子どもたちは、身体活動量が多い。
  4. ストレス反応は安定していた。
  5. メンタルヘルスは後半になるにつれ安定していった。
  6. 認知的実行機能は、3週目の正答率が高かった。 

◆背景と調査の目的

青木・満石研究室の研究グループでは、子どもの身体活動量や体力を測定するとともに、認知的実行機能との関係、ストレス反応との関係を調査し、発育発達期の子どもたちにとって体を動かすことがどのように成長に関係し良い影響があるかを研究してきました。

成長期にある子ども達の心身の健全な発達における身体活動の影響は、体力、メンタルヘルス、不定愁訴、肥満および認知的機能や社会性など多岐に渡り※1、子どもにとって身体活動は、発育発達には欠かせないものです。なかでも、認知的機能として近年注目されている実行機能は「目標思考的な思考、行動、情動の制御」と定義され、早期の自己制御能力は、生涯を通じて維持され社会的な成功や健康状態を予測することが示唆されています※2。

そこで、2020年、COVID-19感染症流行下で学校休業・外出自粛要請のもと、本プロジェクトでは、①普段のような活動ができない子どもたちの身体活動やストレス等がどのような状態であるのか、その保護者の状態とともに実態を明らかにすること、②運動プログラムを配信して、親子の身体活動量やストレス反応、メンタルヘルス、認知的実行機能への効果を検証し、実態と課題を明らかにすることを目的としました。

※1 竹中 晃二(編).アクティブ・チャイルド60min. ― 子どもの身体活動ガイドライン―. サンライフ企画, 2010.

※2 森口祐介. 実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援. Japanese Psychological Review.2015; 58(1): 77-88.

◆調査の概要

調査対象

5〜11歳の子ども11名(平均年齢8.1±2.1歳)とその保護者(父親・母親39歳〜50歳、平均年齢44.5±3.0歳)に協力していただきました。

調査方法

①身体活動量(保護者15名、子ども11名):3軸加速度計内蔵身体活動量計アクティマーカー(Panasonic)を装着して測定しました。測定した項目は、歩数、身体活動レベル(Physical Activity Level: PAL 1日の総エネルギー消費量を基礎代謝量で割った値)、不活動時間(睡眠時間を含む1.5Mets未満の活動時間:寝ているか座っている時間)、軽強度活動時間(1.5Mets〜3.0Mets未満の活動時間:ゆっくり歩いたり仕事をしたりしている時間)、中高強度活動時間(3.0Mets以上の活動時間:速歩き以上の強度の活動時間)です。配信した実行機能ゲームを各家庭で取り組んでもらって、正答数と反応時間を分析しました。

②ストレス反応(コルチゾール:保護者12名、子ども9名)、免疫(sIgA)(保護者7名、子ども7名)は唾液を分析、メンタルヘルス(保護者6〜10名、子ども2〜5名)はアンケートに回答してもらって分析、認知的実行機能(保護者12名、子ども8〜9名)は配信した実行機能ゲームを各家庭で取り組んでもらって、正答数と反応時間を分析しました。

◆親子運動プログラム

undou_sports_family_haha_musume.png

実際に配信した親子運動プログラムは、動画のなかで、運動の先生をしてくれている松木優也先生(健康スポーツ学科)、前田 奎先生(教育開発センター)、村上 いろは先生(佛教大学大学院 教育学研究科生)と開発しました。

外出自粛要請や学校の臨時休校のなか、家でもできるように、親子で体を動かすきっかけとなり、動いているうちに自然に笑顔になれるような楽しい動画を配信することを大切にしました。運動の内容は、体をほぐすような動き、敏捷性を高めるような動き、頭を使いながら体を動かすような動き、大きく体を動かすような動きなど、子どもも大人も楽しめるように、時々はちょっと難しいような運動も入れて考えました。

親子運動プログラムプロジェクトで配信した「親子運動プログラム」は以下で視聴できますので、ぜひ一緒に体を動かしてみてください。

(健康スポーツ学科 教授 青木好子)


関連リンク

前の記事へ

次の記事へ

一覧へ戻る

このページの先頭へ