地域高齢者向け体力測定会を開催

2024年07月04日トピックス

6月22日(土)、23日(日)、京都太秦キャンパス南館1階にて、総合研究所 アクティブヘルス支援機構(センター長 藤田裕之バイオ環境学部教授)が主催する高齢者向け体力測定会が、京都市内在住者を中心にした464名の参加で開催されました。

この体力測定会は、高齢者の方々の健康調査を通じて健康医療学部健康スポーツ学科の学生は体組成や体力の測定技術を習得、また言語聴覚学科の学生にとっては認知機能評価や脳波計測を体験できる貴重な実践学習の機会となっています。

この体力測定会では、地域の高齢者の方々の健康状態を、体力や筋肉量、歩行動作、口腔機能、脳の働きや肩関節機能の測定、あるいは質問紙による生活状況の調査などから評価しています。本学での測定会は、2015年の健康医療学部開設時に公開講座として実施したのが最初です。コロナ過では中断を余儀なくされましたが、昨年は4年ぶりに再開することができました。このように長期にわたって体力や筋量に加え口腔機能など各種身体機能調査を行っている測定会は全国的に珍しく、アクティブヘルス支援機構ではここで得られたデータを、健康長寿や老化研究に広く活用いただけるように整理してまいります。国内で類を見ないユニークな研究フィールドとして、継続していく予定です。

この体力測定会には、京都大学、京都橘大学、京都工芸繊維大学、京都府立医科大学、日本歯科大学、広島大学、藤田医科大学、奈良先端科学技術大学院大学、国立健康・栄養研究所、同志社女子大学、丸太町リハビリテーションクリニックといった機関が参加されています。

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体組成測定

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口腔機能測定

参加者の声

木村みさか 総合研究所アクティブヘルス支援機構研究員

この測定会は、前任校であった京都府立医科大学体育館で2002年に始めたのが起源で、その後、コロナ禍の4年間を除き毎年実施してきました。そのため、今回(2024年)は、回数で言えば20回目、年数で言えば23年目の測定会となります。この測定会は、当初から、体育・スポーツの領域以外の先生方とのコラボで、体力に加え、様々な身体機能や生活様式に関する調査を行ってきました。歯科の先生方による口腔機能測定は2004年から始まっていますが、地域に住む一般のお年寄りの口腔機能を知りたい、というのが、最初に参加された時の理由です。また、測定会では、運動や食事、趣味、生きがいなど、質問紙による生活状況調査も行ってきました。ここで取得した体力や身体組成、生活状況データについては、共同研究グループ間では、一定の手続きによって共有できる仕組みを構築しつつあります。全く異なる学問分野との協働によって、老化研究の新しい方法論の提案や健康寿命延伸への提言につながる研究フィールドになればと思います。

参加者の募集は、直近3年間の参加者に対して案内を郵送し、返信用ハガキに参加の意思表示をしてもらう形で行っています。継続参加者が多く、参加者の平均年齢(2023年 男性80歳、女性79歳)は毎年上昇しています。元気な高齢者が増えていくのも日本の超高齢社会の特徴の一つで、この測定会が「健康長寿を目的とした研究フィールド」としての役割を果たしていることを実感しています。

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参加した後藤さんと村田さん

健康医療学部健康スポーツ学科2年生 後藤千洋さん

今回このような貴重な経験をさせていただきありがとうございました。高齢者を対象とした今回の測定は思っているよりも伝えることの難しさや、表現の大切さなどを改めて生で感じることができてとても良かったです。自分自身怪我をしていて迷惑をかけることもありましたが、測定に携わることができてよかったです。高齢者の人は体が不自由な人もいて体力も少なということがわかり、通りかかりに困っている人を見たら一言お声をかけていけるようにもっとコミュニケーションを積極的にとっていきたいと思いました。

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脳波測定の準備をする村中さん

健康医療学部言語聴覚学科3年生 村中幸希さん

今回体育測定会では主に脳波の検査の手伝いをさせていただきました。中でも印象深かったのは歌をイメージすることや、過去にあった楽しい記憶や悲しかった記憶、これからの暮らしへの思い等各自で工夫をして、脳波ではどのような変化が見られたのかを調べていたところです。高齢者と若年者とではどのような差がでるか、これからどのように分析して高齢者の健康やQOL向上に役立てられるのかなど、興味と疑問を持ちました。今回スタッフとして参加をして、今まで経験したことがなかった検査者側としての手伝いやご高齢の方との接し方等多くのことが学びになりました。参加したのはたった1日でしたが、素晴らしい経験ができたと思います。

森原徹 丸太町病院リハビリテーションクリニック院長・京都府立医科大学 整形外科 臨床教授  

我々、肩関節検診グループは、2017年の体力測定会から参加させていただいております。グループのメンバーは、日常的に肩関節疾患の治療に携わる整形外科医や理学療法士、大学研究者や学生で構成されています。主に、超音波(エコー)と呼ばれる画像診断装置を使って、正常な肩関節機能に欠かすことができない筋(腱板<けんばん>)が傷んでいないか、また痛みなどの症状や肩関節機能との関係を調査しています。これまでの調査で、痛みなどの症状がなくても、4人に1人は腱板が傷んでいることがわかっています。この活動を通して、少しでも多くの方にご自身の肩の状態をお知りいただくとともに、肩関節疾患の早期発見や予防に貢献できるように、鋭意、調査・研究を進めて行きたいと考えております。ご参加いただいた皆様、会場である京都先端科学大学の皆様、準備・運営に携わっていただいているすべてのスタッフの皆様に、心より厚く御礼申し上げます。

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肩関節検診グループ 測定の模様
京都橘大学健康科学部理学療法学科甲斐義浩教授 ご提供

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佐藤嘉伸 奈良先端科学技術大学院大学教授

奈良先端大のグループでは、コンピュータ科学者と医学研究者の共同研究により、CT画像やレントゲン写真から、骨密度や個別の筋肉(中殿筋や腸骨筋など)の筋肉量など、筋骨格の健康状態に関する詳細情報を高精度に測定する画像認識AIを開発しています。今回、京都大学人間健康科学の先生方を通して、木村みさか先生、山田陽介先生、森原徹先生をご紹介いただき、体力測定会において研究紹介の機会をいただきました。今後、体力測定会の参加者の方々に、私たちが開発中のAIの有用性を示すエビデンス創出にご協力いただくと共に、このAIのデータと体力測定会で得られる他の様々なデータと組み合わせて、新たな学術研究につなげることを目指しています。そして、参加者の方々には、図に示すような各個人の筋骨格の詳細なデータをお届けできればと思っております。今後の展望としましては、AIによる筋骨格詳細情報の測定を、参加者の方々に対して、3年後、5年後、10年後と追跡させていただき、筋骨格の加齢変化に関する新しい知見の獲得、および、参加者の方々への継続的な筋骨格情報の提供の両方を進めていければと思っております。最後に、測定会の運営をされている京都先端科学大学の皆様はじめ、すべてのスタッフの皆様に、心より厚く御礼申し上げます。

(研究連携センター/オープンイノベーションセンター・亀岡(OICK) 柴田雅光)

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